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大阪国税局長 吉井 浩 |
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公益財団法人納税協会連合会会長 尾崎 裕 |
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【司会】 公益財団法人納税協会連合会 常任副会長 新木 敏克 |
(敬称略)
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1 関西経済の展望 |
新木
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今日は、新春の対談ということですので、関西経済、税、そして、これからの納税協会について、ざっくばらんにお話しいただければと思います。 さて、我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による消費活動の自粛やインバウンドの低迷などを背景として依然厳しい状況にありますが、ワクチン接種の進展や海外経済の改善などを受けて、回復傾向にあるようです。関西経済も同様に、輸出や設備投資の増加などを受けて、持ち直しの動きがあるように思います。 まずは尾崎会長、このような関西経済の現状と今後の展望について、どのようにお考えでしょうか。
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尾崎 |
関西経済はまだコロナ前の水準までの回復に至っていませんが、全体としては緩やかに持ち直しています。製造業では原材料価格の上昇や部品の供給不足の影響も出ておりますが、世界的にモノへの需要が回復しており、企業の生産活動はコロナ前の水準に近づいております。一方で、対面型サービス業を中心に、緊急事態宣言によって度重なる自粛を余儀なくされた業種の方々は、大変な苦境に立たされています。 現在、国民へのワクチン接種が進み、感染対策が一定の効果を発揮するなど経済の回復へ明るい兆しが見えつつあります。しかし、政府の資金繰りや雇用維持の支援を受けて、何とか事業を継続している企業も多くあり、これらの企業の事業が正常に戻る、とりわけ対面型サービス業に活気が戻るまでは、関西経済が復活したとはいえません。そのためにも、当面続くと予想されるウィズコロナの時代を乗り越えていかなければなりません。これまでの知見を活かし、ワクチンパスポートや陰性証明などもうまく活用しながら、感染のコントロールと経済活動を両立させていくことが不可欠です。 大阪・関西では、2025年大阪・関西万博が控えています。この万博は、ポストコロナの新しい経済社会を世界に発信する絶好の機会となります。2025年に向けて産官学が叡智を結集させ、新ビジネスやイノベーションを生み出せるように、大阪・関西がもっともっと元気になることを期待しております。
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新木 |
吉井局長は、関西経済について、どのようにご覧になっていますか。
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吉井 |
令和2年度の近畿2府4県の国税収納額は、約10兆753億円で、前年度と比べ、約5050億円(前年比105・3%)増加しておりますが、主な増加要因は、消費税率の引上げに伴うものであり、景気回復にはなお時間がかかるものと思われます。 また、昨年9月に国土交通省が発表した基準地価では、「近畿2府4県の府県別平均変動率が全て前年割れ」となっており、新型コロナウイルス感染症による経済活動の停滞やインバウンド需要の消失が長引いていることが影響しているものと思われます。 一方で、関西の経済状況については、近畿財務局が発表しております、昨年10月の管内経済情勢報告において、「新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい状況にあるなか、一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している」とされており、景気の先行きについて、回復基調が見え始めています。 関西に地盤を置く企業・大学がいち早く新型コロナウイルスの国産ワクチンの開発に取り組み、生産体制を整えており、さらに、在宅治療が可能な飲み薬タイプの治療薬についても、開発を進め、生産体制を整えているなど医療・医学の長い歴史がある関西の企業や大学からコロナ収束に向けた貢献が始まっています。 また、先ほど尾崎会長からお話がありましたが、2025年に開催が予定されている大阪・関西万博を見据え、JR大阪駅北側をはじめとした大規模な再開発が進んでいるなど、これらを起因として関西経済が盛り上がっていくこと、更には関西を起点として日本経済の活性化につながっていくことを期待しております。
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2 社会経済情勢の変化と税務行政の対応 |
新木 |
ありがとうございます。次に税務行政について、局長にお伺いいたします。我が国の経済社会の状況は、経済のグローバル化、情報技術の発展、人口減少や少子高齢化、地域格差の拡大などの大きな構造変化の中にあり、さらに、現在は感染対策と日常生活の回復に向けた取組の両立が求められています。 このような状況の中において、変化する社会経済情勢への対応を常に求められる税の執行官庁として、ポストコロナ時代を見据え、どのような施策・取組をされておられるのでしょうか。
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吉井 |
経済取引のグローバル化・ICT化に加え、新型コロナウイルス感染症を契機として、デジタルの活用によりサービスや仕事の在り方を変革するデジタル・トランスフォーメーションを推進する動きが社会全体で広まっております。 国税の申告や納付もデジタルを活用すれば、より簡単に、より便利にできるようになり、税務署や国税局の業務もより効率的かつ高度に行うことが可能になります。 国税庁では、このような観点を踏まえ、昨年6月に、平成29年6月に公表した「税務行政の将来像」の改定を行い、目指すべき将来像の内容をアップデートした「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション─税務行政の将来像2・0─」を公表し、デジタル技術を活用して国税に関する手続や業務の抜本的な見直しに取り組んでいくこととしています。 具体的には、これまで同様、「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を2本の柱としつつ、更なる納税者利便の向上に向け、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」に向けた構想を示すとともに、将来的なAIの活用を見据え、幅広いデータ分析により申告漏れの可能性が高い納税者の判定を行うなど、課税・徴収の効率化・高度化に向けた取組を更に進めていくこととしています。 税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの着実かつ継続的な実施により、国民にとって利便性が高く、かつ、適正・公平な社会の実現に貢献していきたいと考えています。 さて、間もなく、令和3年分の確定申告を迎えます。 本年の確定申告におきましては、スマホ専用画面の利用対象者を更に拡大し、特定口座・上場株式等に係る繰越損失等についても利用可能になったほか、スマホのカメラ機能を利用した源泉徴収票の読み取り機能が追加され、源泉徴収票を撮影することで、記載されている各項目が作成コーナーに自動反映されることとなり、利便性の向上が一層図られております。 また、ダイレクト納付、振替納税、クレジットカード納付、インターネットバンキングといったキャッシュレス納付は、新型コロナウイルス感染症の感染防止という観点からも、有効な納付手段となっています。 このように、パソコンやスマホからe─Taxや国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーをご利用いただくことで、ご自宅などから申告・納税等ができるよう、環境整備に努めておりますので、感染症対策の観点からも是非、ご利用いただきますよう、よろしくお願いいたします。
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新木 |
尾崎会長、納税協会会長として、税務行政に対する要望がありましたら、お願いします。 |
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尾崎 |
税務当局におかれましては、新型コロナウイルス感染症の対応として、申告・納付期限の延長や納税の猶予の特例などを措置していただきました。さらに、その手続について、様々な機会を通じた周知・広報や納税者の相談対応に取り組んでいただきました。誠にありがとうございます。また、適正な申告・納税を行った納税者の公平感の維持のための活動や、e─TaxなどICTを活用した利便性の高い申告・納税手段の充実を期待申し上げます。 国の財政においては、令和2年度に新型コロナウイルス感染症対策のため、総額70兆円を超える大規模な補正予算が編成され、令和3年度当初予算は過去最大の106兆円となりました。このように、財政支出が著しく拡大する中で、財政健全化を進めることの重要性はますます強まっています。 2025年頃から団塊世代が後期高齢者となり、社会保障関連支出が一層増大することが見込まれます。社会保障制度については給付の効率化・重点化を進め、他の歳出についても効果が少ない施策の廃止や縮減を行うとともに、財政再建のための具体的な道筋を示した上で、中長期的な展望を見据えた税制、また、企業の国際競争力、技術力を高めるとともに経済全般の活性化が図れる税制の構築、加えて、2025年大阪・関西万博の立地促進税制を創設いただきたいと存じます。 その中で、大阪国税局様をはじめ、税務当局におかれましては、引き続き税務行政を「公平」かつ「適正」に運用していただき、税に対する納税者の理解と信頼を高めていただくようお願いいたします。
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3 納税協会の活動について |
新木 |
納税協会では、税に関する公益法人として、インボイス制度の周知・広報活動や租税教室の開催など、公益目的事業の推進に積極的に取り組んでおります。 また、税の啓蒙活動や相談業務を通じて、地域に根ざした活動を展開しており、会員をはじめ納税者の方々に対しては、きめ細かな対応をすることで、より良いサービスの提供に努めています。次代を担う青年部会の活動にも力を入れており、納税協会連合会青年部会連絡協議会を中核として更なる活性化を図ることとしております。 尾崎会長、新たな年を迎えて、納税協会及び連合会の今後の活動について、どのようにお考えでしょうか。
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尾崎 |
昨年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、納税協会の統一事業である改正法人税法等説明会及び年末調整説明会を実施できたのは、約半数の納税協会に留まりました。そのような中、リモートで税務相談を行ったり、まんが冊子を作成して確定申告を広く周知したり、青年部会役員が動画を撮影して租税教室を行ったり、SNSアカウントを開設して運用したり、各納税協会は様々に工夫して事業を行いました。今後も新型コロナウイルス感染対策を十分考慮しながら、積極的に納税協会活動を実施してまいりたいと考えています。 また、昨年は新型コロナウイルスの影響により開催できませんでしたが、本年11月には「納税協会青年の集い」を大阪で開催する予定です。この集いでは、各地の青年部会員が租税教育活動の発表を行い、互いの活動内容を知ることで、青年部会全体の活性化につながることを期待しております。 昨年11月には、「税を考える週間」にあわせて、キッザニア甲子園において税務署パビリオンを出展しました。ここでは、子供たちに税務職員として、消費税をはじめとする税の必要性や使い道、納税方法について学んでもらうとともに、キッザニアの街に出て調査を行う「税務調査」の仕事や、来場者へ税金に関するセミナーを行う「税務広報」の仕事を体験してもらいました。納税協会が進める租税教育への取組姿勢や、納税協会そのもののPRにもつながったものと考えております。 私ども納税協会及び納税協会連合会といたしましては、税に関する公益法人として、設立当初から掲げる「適正な申告納税の推進と納税道義の高揚を図り、税務行政の円滑な執行に寄与し、企業及び地域社会の発展に貢献する」という基本理念にのっとり、関係団体との連携・協調を密に、社会環境の変化に対応した公益性の高い事業を展開してまいります。また、会員の皆様、並びに地域の方々のご意見・ご要望に真摯に耳を傾け、地に足の着いた活動を引き続き行ってまいりますので、大阪国税局様をはじめ関係各位のご支援をお願いいたします。
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新木 |
吉井局長、納税協会に対するご意見、ご提言等がございましたら、お聞かせください。 |
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吉井 |
納税協会は、税知識の普及、適正な申告納税の推進及び納税道義の高揚を図るという目的を掲げられ、長きにわたりご尽力いただいており、私どもにとりましても、大変心強い存在であると感じております。 特に、納税協会の部会の中でも、次代を担う青年部会は、活発な事業活動を行っていただいており、平成29年からは「租税教育活動」を青年部会の共通のテーマとして、租税教育の充実に大きく貢献しておられます。 昨年は、新型コロナウイルス感染症の影響により租税教育活動が制限される状況にありましたが、そのような中においても、オンラインによる租税教室を開催するなど工夫を凝らして取り組んでいただきました。 このように、今後とも、コロナ禍においてもできることは何か、更には、ワクチン接種が進み行動制限が緩和された状況においては何ができるかなどについて、納税協会の皆様と意見交換を活発に行い、新しい取組を実施していきたいと考えております。 また、租税教育への取組として、先ほど尾崎会長からキッザニア甲子園への出展についてお話がありましたが、私も昨年11月に伺いました。 次代を担う多くの子供たちが、税務調査や税務広報といった税務署の仕事に興味を持って体験するとともに、納税の意義などについて、学び、理解している姿を見て、日本の未来は明るいという気持ちになりました。 来年10月1日から開始されるインボイス制度の登録申請書の受付が昨年10月1日から始まっていますが、納税協会の皆様におかれましては、インボイス制度の周知・広報活動に積極的に取り組んでいただいております。 令和5年10月1日から登録を受けるためには、同年3月31日までに登録申請書を提出する必要がありますので、制度が円滑に導入・定着されるよう、納税協会の皆様としっかりと連携を図りながら、制度の周知・広報に努めてまいりたいと思います。 納税協会の皆様とは、税務行政の良き理解者、良きパートナーとして、これまで以上により良い連携・協調関係を築いていきたいと考えておりますので、本年も引き続き、税務行政へのご支援・ご協力をお願いするとともに、魅力ある事業活動を展開され、企業経営及び地域社会の発展に貢献されますことを期待しております。
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4 雑感 |
新木 |
新春ですので、今年の抱負などをお聞きしたいと思います。局長は、今年はどのような年にしたいとお考えですか。
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吉井 |
国税組織を取り巻く環境が大きく変化する中で、昨年4月に新たな「国税庁の組織理念」が策定されました。この組織理念の下で、本年も引き続き、国民の信頼のもとで国の財政を支える国税組織を目指し、使命感を胸に挑戦する税のプロフェッショナルとして日々業務に取り組んでまいりたいと思います。 今年の干支は「壬寅(みずのえとら)」ですが、「壬」は厳しい冬を耐え抜き内に蓄えた陽気で次の時代の礎となる、「寅」は強く大きく成長するという意味があり、「厳しい冬であるほど春の萌芽は生命力に満ち、華々しく生まれる年となる」といわれています。 このように、厳しいコロナ禍が収束し、明るい未来への兆しが見え、新たな始まりの年となることを祈念しております。 納税協会におかれましては、これまで取り組まれてきた活動が実を結び、事業活動がより一層活性化される一年になることを期待しております。
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新木 |
尾崎会長は、どのような年にしたいとお思いですか。 |
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尾崎 |
「コロナを乗り越え、新たな時代への挑戦」の年にしたいと思います。昨年は、度重なる緊急事態宣言によって、経済・社会活動の自粛が余儀なくされ、力強い経済回復とはいきませんでした。万全な医療体制を確保し、今年こそ感染のコントロールと経済活動の両立が実現できることを期待しております。 また、日本経済のサプライチェーンがグローバルに展開される中、日本だけではなく、世界全体で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、経済活動が正常化された社会を取り戻すことが求められます。国内でも、国産ワクチンや経口治療薬が実用化されようとしている中、国際的な新型コロナウイルス対策に日本も大いに貢献できることを願っております。 関西の企業は、技術やビジネス・モデルに創意工夫を図り、この新たな時代に挑戦していかなければなりません。私ども納税協会は、これからの日本社会を支える会員の皆様を、税務を含め多面的にご支援することを通じて、関西ひいては日本経済の発展に貢献してまいりたいと存じます。
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新木 |
本日はお忙しいところ、大変有意義なお話を伺うことができました。 今年も、納税協会連合会は、納税協会とともに会員の皆様が加入して良かったと思っていただけるような、魅力ある事業活動ができるよう努力してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本当にありがとうございました。
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