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これからの関西経済、税、納税協会 ─新年の抱負を語る─

2023.01.10

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大阪国税局長
後藤 健二
公益財団法人納税協会連合会会長
尾崎 裕

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【司会】
公益財団法人納税協会連合会
常任副会長
新木 敏克

(敬称略)

1 関西経済の展望

新木

今日は、新春の対談ということですので、関西経済、税、そして、これからの納税協会について、ざっくばらんにお話しいただければと思います。
 さて、我が国経済は、エネルギー・食料品の価格上昇や海外経済の減速などの影響を受けつつも、活動制限の緩和により外食や宿泊などのサービスを中心に消費の回復が見られ、また、デジタル化・脱炭素に向けた設備投資の増加などもプラスに働き、回復傾向にあるようです。関西経済も同様に、足元では持ち直しの動きがあるように思います。
 まずは尾崎会長、このような関西経済の現状と今後の展望について、どのようにお考えでしょうか。

尾崎

 世界経済がコロナ禍から回復に転じようとする中で、昨年の2月にロシアによるウクライナ侵攻という想定外の事態が発生しました。コロナ禍で生じていた原材料や製品の需給バランスの悪化に拍車がかかり、エネルギーや食料品価格が高騰し、世界は大幅なインフレに見舞われています。このインフレに対処するため、各国の中央銀行が緩和的な金融政策を改め、政策金利の引き上げや量的引き締めに舵を切った結果、金融市場や為替市場に大きなプレッシャーが掛かっています。関西経済と関係が深い中国経済も、ゼロコロナ政策の継続や不動産市場の調整により、経済成長率を下げる見通しとなっています。

 このように、世界経済が動揺していることは、現在、コロナ禍から回復を続けている関西経済にとっても、大きな懸念材料であると思います。一方で、昨年10月に海外からの旅行者の入国規制がようやく緩和されたことで、関西ではインバウンド需要が本格的に回復することが期待されます。加えて、脱炭素やデジタル・トランスフォーメーションに向けた、関西企業の設備投資の意欲は衰えておらず、内需の底堅さは損なわれていないと感じております。
 今後、当地では、うめきた2期地区の開発、大阪・関西万博の開催、統合型リゾートの開発など、成長の起爆剤となるビッグイベントが目白押しです。これらを機に、世界中の叡智を結集させ、新ビジネスやイノベーションを生み出し、不透明な社会経済情勢の中でも、大阪・関西が大いに活気にあふれる地域となることを期待しております。

新木

 後藤局長は、関西経済について、どのようにご覧になっていますか。

後藤

 新型コロナウイルスの状況や原油・原材料価格の高騰に加えて、円安の進行等が内外経済に与える影響を注視していく必要があると思いますが、足元の経済指標から見ますと、好転の動きを示しており、回復基調を維持していくものと感じております。
 近畿財務局が発表している、昨年10月の管内経済情勢報告では、近畿地域の経済は、「持ち直している」とされております。
 また、令和3年度の近畿2府4県の国税収納額は、約11兆843億円で、前年度と比べ、約1兆90億円(前年比110・0%)増加しております。円安により輸出企業の業績が伸びたことや個人消費が徐々に回復したことなどにより、税収の柱となる所得税、法人税、消費税がいずれも増収となっていることから、税収面からも関西経済が回復基調にあることがうかがえるのではないかと思っています。
 昨年9月に国土交通省が発表した近畿2府4県の基準地価においても、大阪府、京都府、兵庫県の商業地価は上昇に転じており、関西経済の回復ぶりが反映された結果になっていると感じております。
 また、2025年に開催される大阪・関西万博は、開催期間中に国内外から2800万人を超える来場者と約2兆円の経済波及効果が見込まれていますが、この万博の開催を控え、JR大阪駅北側では、オフィスやホテル、タワーマンションの建設が進んでおり、JR大阪駅に近接する新駅の設置やこの新駅から関西国際空港をつなぐ新たな鉄道路線の建設も着手されています。
 私としては、コロナ禍が収束に向かいインバウンド需要が回復し、併せて、大阪・関西万博を契機として関西経済が盛り上がり、さらには、日本経済が活性化することを期待しております。

2 社会経済情勢の変化と税務行政の対応
新木

 ありがとうございます。次に税務行政について、後藤局長にお伺いいたします。我が国の社会経済の状況は、経済のグローバル化、情報技術の発展、人口減少や少子高齢化、地域格差の拡大などの大きな構造変化の中にあり、さらに、現在は感染対策に万全を期した上で、社会経済活動の正常化を進めることが求められています。このような状況の中において、変化する社会経済情勢への対応を常に求められる税の執行官庁として、Withコロナ時代を見据え、どのような施策・取組をされておられるのでしょうか。

後藤

 近年、経済取引のデジタル化やグローバル化の進展に加えて、新型コロナウイルス感染症を契機として、デジタルの活用によりサービスや仕事の在り方を変革するデジタル・トランスフォーメーションを推進する動きが社会全体で広まっています。
 国税の申告や納付も、デジタルを活用すれば、より簡単に、より便利にできるようになり、税務署や国税局の業務も、より効率的に、より高度に行うことが可能となります。同時に、誠実に納税を行っている多くの方々が不公平を感じることのないよう、必要なデータを収集・分析し最大限に生かしながら、適正・公平な課税と徴収を進めていくことも重要です。
 このような観点を踏まえ、国税庁では、令和3年6月に「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション─税務行政の将来像2・0─」を公表し、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指す構想を示しました。また、同年12月には、令和5年までを目途に取り組むべき施策を整理した「税務行政DX~構想の実現に向けた工程表~」を公表したところです。
 社会経済や技術環境は目まぐるしく変化しています。そうした変化に柔軟に対応し、「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という国税庁の使命を果たしていくためには、スピード感をもって取組を進めることが重要です。
 税務行政のデジタル・トランスフォーメーションの着実かつ継続的な実施により、国民にとって利便性が高く、かつ、適正・公平な社会の実現に貢献していきたいと考えています。
 さて、間もなく、令和4年分の確定申告を迎えます。
 国税庁では、納税者利便の向上を図るため、スマホ等を利用した自宅等からのe─Taxの推進に取り組んでおり、本年の確定申告は、確定申告書等作成コーナーの機能が拡大するなど、一層便利なものとなります。 
 具体的に申し上げますと、決算書や収支内訳書をスマホで作成し、e─Tax送信できるようになったほか、これまでマイナンバーカードを利用してe─Tax送信するには、マイナンバーカードを3回読み取る必要がありましたが、本年の1月からは、原則1回の読み取りで送信できるようになります。
 さらに、公的年金等の源泉徴収票や国民年金保険料についても、マイナポータル経由でデータを取得して申告書へ自動入力することができるようになります。
 このように、納税者の皆様方が申告会場に出向かずとも、スマホ等を利用して確定申告書等を作成し、e─Tax送信していただけるよう、環境整備に努めておりますので、是非ご利用いただきますようお願い申し上げます。
 また、キャッシュレス納付についてですが、納税者の利便性の向上と現金管理等に伴う社会全体のコストを縮減する観点から、令和3年度に32・2%だったキャッシュレス納付の割合を「令和7年度までに4割とする」ことを目指して、利用拡大に取り組んでおります。
 新型コロナウイルス感染症の感染防止という観点からも、有用な納付手段ですが、昨年の12月からはスマートフォンを利用する決済サービスも導入されましたので、この機会に税務署や金融機関へ行かずに納税できるキャッシュレス納付のご利用をお願いいたします。

新木  尾崎会長、納税協会会長として、税務行政に対する要望がありましたら、お願いします。
尾崎

 税務当局におかれては、新型コロナウイルス感染症の対応として、スマホ等による電子申告の拡充に取り組んでおられます。昨年の確定申告では、スマホのカメラ撮影で源泉徴収票の記載内容が自動入力でき、また、マイナンバーで医療費やふるさと納税のデータを取得し自動入力できることとなり、e─Tax利用が促進されました。本年1月からは、公的年金収入・国民年金保険料のデータの取得が可能となる利便性の高い新しいサービスが提供されるなど、マイナンバーだけで簡便に申告・申請等ができる社会の予兆を感じております。今後とも税務手続のデジタル化による納税者利便の更なる向上を期待しております。経済においては、不透明な情勢の中で、政府の経済対策も功を奏して、経済は持ち直している状況ですが、令和4年度当初予算は過去最大の107兆5964億円となりました。 このように、財政支出が拡大する中で、財政健全化にも取り組むことは忘れてはならない重要な課題です。政府には、持続的な経済成長を可能とする施策を実行して歳入の拡大を図るとともに、懸案事項である社会保障制度改革など歳出の抑制を行い、同時に実効性のある、時代の変化に対応した税制を構築していただきたいと思います。その中で、大阪国税局様をはじめ、税務当局におかれましては、引き続き税務行政を「公平」かつ「適正」に運用していただき、税に対する納税者の理解と信頼を高めていただくようお願いいたします。

3 納税協会の活動について
新木

 納税協会では、税に関する公益法人として、本年10月より開始されるインボイス制度の周知・広報活動や租税教室の開催など、公益目的事業の推進に積極的に取り組んでおります。また、税の啓蒙活動や相談業務を通じて、地域に根ざした活動を展開しており、会員をはじめ納税者の方々に対しては、きめ細かな対応をすることで、より良いサービスの提供に努めています。次代を担う青年部会の活動にも力を入れており、納税協会連合会青年部会連絡協議会を中核として更なる活性化を図ることとしております。尾崎会長、新たな年を迎えて、納税協会及び連合会の今後の活動についてお聞かせください。

尾崎

 新たな消費税の仕入税額控除の方法として導入されるインボイス制度の登録申請が、令和3年10月から始まっています。納税協会においては、納税協会の統一事業である改正法人税法等説明会や年末調整説明会に加えて、本年10月から始まるインボイス制度を見据えて、これまで数多くの説明会を開催してまいりました。広報活動の一環として、北新地・祇園での「インボイス登録推進の街」宣言式などを実施してまいりました。本年も引き続き、インボイス制度の円滑な導入に向けて、税務当局と連携を図りながら、各種事業に取り組んでいくこととしています。また、令和2・3年度に開催中止となりました「納税協会青年の集い」を昨年11月29日に3年振りに開催することができました。この集いには後藤局長をはじめ、局署の幹部の方々にもご出席いただき、誠にありがとうございました。各地の青年部会員が、租税教育活動や地域のボランティア活動等の発表を行い、互いの活動内容を共有することで、青年部会さらには納税協会全体の活性化につながったと感じております。昨年11月11日からの「税を考える週間」には、キッザニア甲子園において、子供たちが消費税調査や税務広報の仕事を体験できる税務署パビリオンの開設や、オンライン税金クイズ大会を開催し、子供たちに税金の大切さを身近に感じてもらいました。この事業は、平成30年を皮切りに5回目の開催となりますが、毎年多くの来場者があり、マスコミ報道等により広く納税協会のPRにつながったものと考えております。私ども納税協会及び納税協会連合会といたしましては、税に関する公益法人として「適正な申告納税の推進と納税道義の高揚を図り、税務行政の円滑な執行に寄与し、企業及び地域社会の発展に貢献する」という基本理念の下、大阪国税局様をはじめ関係団体との連携・協調を密にして、公益性の高い事業を展開してまいりますので、引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。

新木  後藤局長、納税協会に対するご意見、ご提言等がございましたら、お聞かせください。
後藤

 納税協会におかれましては、税知識の普及、適正な申告納税の推進及び納税道義の高揚を図るという目的を掲げて、私どもと同じ志を持って事業活動を展開され、長きにわたりご尽力いただいており、大変心強いパートナーであると感じております。インボイス制度を円滑にスタートさせるため、私どもとしましては、周知・広報を当面の最重要課題として取り組んでおりますが、この点でも、納税協会には大変なご尽力をいただいております。インボイス制度の説明会や相談会を税務署との共催で数多く開催していただいていることに加え、例えば先ほど尾崎会長からご紹介のありました、北新地・祇園の料飲組合の皆様によるインボイス登録推進の宣言に当たっては、北・東山の納税協会から、お店に貼り出して登録済みであることを示すステッカーを贈呈するといった、ユニークなご支援もいただいております。また、納税協会の部会の中でも、次代を担う青年部会は、研修会や講演会の開催など各種の事業活動に取り組まれているほか、平成29年からは「租税教育活動」を共通のテーマとして、租税教育に重点的に取り組んでおられます。昨年11月に大阪で開催された「納税協会青年の集い」には私も参加させていただきましたが、工夫を凝らした各地域の取組が紹介され、青年部会の皆様の租税教育活動に対する熱い思いが伝わってまいりました。さらに、「税を考える週間」には、キッザニア甲子園に体験コーナーを出展いただいております。私も昨年11月にキッザニア甲子園に伺い、この体験コーナーを拝見しましたが、税務調査や税務広報といった税務署の仕事を熱心に体験する子供たちの姿が印象に残っています。 納税協会の皆様には、本年も引き続き、税務行政の円滑な執行に対する一層のご支援・ご協力をお願いいたしますとともに、魅力ある事業を展開され、企業経営及び地域社会の発展に貢献されますことを期待しております。

4 雑感
新木

 新春ですので、今年の抱負などをお聞きしたいと思います。後藤局長は、今年はどのような年にしたいとお考えですか。

後藤

 先ほども触れましたが、インボイス制度の円滑なスタートに向けて周知・広報に全力をあげたいと思います。制度開始からインボイス発行事業者として登録を受けるためには、原則として本年3月末までに登録申請手続を行う必要がありますが、取引先との調整や経理システム等の改修など、事前準備を円滑に進めていただくためにも可能な限りお早めに申請いただくようお願いします。なお、この時期は所得税等の確定申告と重なり、税務署は混雑が予想されますので、申請には是非e─Taxをご利用ください。さて、今年の干支は「癸卯(みずのとう)」ですが、「癸」は新たな生命が成長しようとしている状態、「卯」は草木が土を割って芽吹き、地面を覆っている状態という意味があり、「これからの成長が見られる年」であるといわれています。2年後に迫った、大阪・関西万博に向けて関西経済が更に活気を取り戻し、大きく成長していける年になることを祈念しております。納税協会におかれましては、これまで取り組まれてきた活動が実を結び、事業活動がより一層活性化される一年になることを期待しております。

新木  尾崎会長は、どのような年にしたいとお思いですか。
尾崎

 「大阪、関西の魅力を再発信する」一年にしたいと思います。当地は世界の人々を魅了する文化、学術そして観光資源が豊富で、コロナ禍という逆境の中で、更に輝きを増したその魅力を世界に再発信することが大切です。今後予定されている、大阪・関西のビッグイベントを活かして、大阪・関西が元気に発展していく姿を見せたいと思います。
 一方で、ビジネスにおいては、今回の世界経済情勢の激変に対応する一環として、経済安全保障を考慮したサプライチェーンの見直しが叫ばれています。万一の有事に対して、各企業が自社のレジリエンスを強化することが急務ですが、同時に、地域としても、生産拠点の再配置など、国の経済安全保障に役立つ取組を考えていかなければなりません。幸い、関西には、技術やビジネス・モデルに創意工夫を凝らし、新たな時代に挑戦する意識の高い企業が多くありますので、きっとお役に立てると思います。
 私ども納税協会は、これからの日本社会を支える会員の皆様を、税務を含め多面的にご支援することを通じて、関西ひいては日本経済の発展に貢献してまいりたいと存じます。

新木

 本日はお忙しいところ、大変有意義なお話を伺うことができました。

 今年も、納税協会連合会は、納税協会とともに会員の皆様が加入して良かったと思っていただけるような、魅力ある事業活動ができるよう努力してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本当にありがとうございました。

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